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小説『花そとば』 第36話

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   はなそとば タイトル
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               第二部 山端の巫女(やまはなのみこ)   36

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      九  雉子の聲 (きじのこえ)   



 さきほどまで、ある弔いの光景を浮かばせていた雨田虎彦は、慎五郎が持参して見せた分厚い一冊と同じものが東京の書斎の奥で眠っているのだと思うと、この世には、奇遇ではない宿命という実在を体感したようで身震いがした。今いも一羽の雉(きじ)が藪奥から飛び出してきて、ほろうちの甲高い声を空に向かって突きあげるようだ。虎彦の五体は指先の根まで振るえ、まったくそんな身震いを老人はした。

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 はくしゅう書籍 5

 それによって、古い弔いの光景がにわかな色彩を加えられ、虎彦の眼に弔いがより鮮やかな蘇りの光景となって泛かんできた。同時に、そこにまた阿部家の深い関わりと、山端集落との結びつきが泛かぶのだ。
 眼に浮かぶのは、もう15世紀も前の太古の、古い錆びれた日本の神々の弔いであった。
 人間よる古事記が記される以前のその昔、雉の鳴女(なきめ)とい神がいた。
 この鳴女こそが、今、虎彦の全身を振るえせている。
 雨田虎彦は、老いた眼を若かりしころのように悠々とさせていた。

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 多くの神々とオモイカネは、「鳴女という名の雉を派遣するのがよいでしょう。」と答えた。そこで、タカミムスヒとアマテラスは、雉の鳴女(なきめ)に「あなたが言って、アメノワカヒコにも問いただして来なさい。(あなたを葦原中国に派遣した理由は、荒ぶる神々を説得して帰伏させろということのはずではなかったのですか。なのに、どうして8年もたっても復命しなかったのですか)とそう言って来なさい」と命じた。
 そうして、その鳴女は高天原から降って、アメノワカヒコの家の門の楓の上に止まって、アマテラスとタカミムスヒの言葉を、つぶさに、言葉どおりに伝えた。

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 ところが、アメノサグメというものがこの鳥の言うことを聞いて、アメノワカヒコに「この鳥はたいへん声が悪い。殺した方がよい」と勧めたので、アメノワカヒコは高天原の神から持たされた、アメノハジ弓とアメノカク矢を使って、この雉の鳴女を射殺してしまった。
 すると、その矢は鳴女の胸を貫いて、天上まで上っていき天の安の河原にいたアマテラスとタカギノカミのところまで届いた。タカギノカミというのはタカミムスヒの別名である。タカギノカミがその矢をとって見ると、血が矢の羽についていた。
 タカギノカミは「この矢はアメノワカヒコに与えた矢である。」と言って、多くの神々に見せた。そして、「もし、アメノワカヒコが命令に背かないで悪い神を射た矢がここに届いたのならばアメノワカヒコにはあたるまい。逆に、アメノワカヒコに悪い心があるのならば、矢に当たって死ぬ。」と言って、その矢を取って矢が飛んできた穴から衝き返して下すと、朝の床に寝ていたアメノワカヒコの胸に当たってアメノワカヒコは死んだ。
 ところで、高天原から派遣した雉は帰ってこなかった。「雉の片道使い」ということわざは、こういったことが起源になっている。
 さて、アメノワカヒコの妻のシタテルヒメの泣く声が、風と共に高天原まで届いた。そして、高天原にいるアメノワカヒコの父のアマツクニタマとアメノワカヒコの妻子達が聞いて、地上に降ってきて泣き悲しんだ。
 さっそくそこに喪家をつくり、河の雁を支社に食事をささげる役とし鷺を喪屋の掃除をする役とし、翡翠を食事をつくる役とし、雀を米をつく女とし、雉を泣き女として、八日八晩の間、連日にぎやかに遊んで死者の霊を迎えようとした。
 このときに、アジシキタカヒコネノカミがやって来て、アメノワカヒコの喪を弔った。
 そのとき高天原からやってきたアメノオヒの父と妻は、泣きながら「私の子は死んでいない。ここにいる。私の夫は死んでいない。ここにいる。」と言って、手足に取りすがって喜び、泣いた。その父や妻が見誤ったのは、二柱の神が似ていたからで、見誤ったのも無理はない。
 ところが、アジシキタカヒコネは、たいへん怒って、「私は親友の弔いに来たのだ。それなのに、わたしを汚い死人と間違えるなど、とんでもない」と言って、大きな剣を抜き、喪家を切り伏せ、蹴飛ばしてしまった。

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 この蹴飛ばされた喪屋は、ミノの国の相川にある喪山となった。持っていた剣は大量(おおばかり)といい、まだ神度(かむど)の剣といった。
 そうしてアジシキタカヒコネが怒って飛び去った時に、妹のシタテルヒメは、兄の名を知らしめようとして、次のように歌った。

    天なるや 弟たなばたの うながせる 玉のみすまる みすまるに
    穴玉はや み谷 二渡らす アジシキ タカヒコネの神そ

「天上にいる若い織姫が首にかけている糸で結んだ玉飾り、その意図で結んだ玉飾りは、穴の開いた玉で出来ている。その穴のような谷を二つも渡られた。それがアジキシキタカヒコネノカミである」
 この歌は夷振(ひなぶり)である。虎彦は静かに眼を閉じた。
「江口章子(あやこ)・・・!」
 そんな瞼の裏に一人の女性を偲ぶと、かって訪ねた大分の旅が泛かんでいた。

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 雉鳴きて平穏訪る、という。戦地から帰還した虎彦は、敗戦をそう感傷させる雉と出逢った。そこは生まれ故郷の山河、生駒山である。その生駒の山中で聞いた一羽のほろうちから、連想させる神の物語を感じた。
「戦争は終わったが、私は最も倭(ヤマト)を梃子摺らせた神という事になっている」
 と、神はさも悲しそう語りかけてきた。

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 どうやら、祀られている杜人モリト(=王樹様)と部下であった守人モリト(=私)が混同されていった結果そうなってしまった。こう言って神は腹を曲げている。
 虎彦がよくよく聞いてみると、戦争が終わって早々、監視の為に送られてきた雉鳴女キジナキメという女性の神霊が、そういう勘違いをしてしまったのが問題であるらしい。
 さらに虎彦は、この神の悲痛な声に耳を傾けてみた。
 私もまさかあの王樹様と間違われるなど欠片にも思わなかったので勘違いは進行し、中央の命令によって『モリト』の名を変えるよう言われた時も私の改名だと思っていた。神はそんなことをいう。
 さらに、倭のイワレビコは切り札の八咫烏(やたがらす)と互角以上に戦う王樹様を随分と畏れているようで、名を変え、信仰が王樹様に向かないよう封じ続けたい、と。

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 これに従えば、史書において中央が使わした神の一柱としてやる、と。雉鳴女の話を聞くに、私が深く臣従している事が周辺地域の安定に必要なようで、従わねば再び矛を交え民を殺す事になるだろう、などと軽く脅迫してきた。元々が中央の仲間だ、等と書かれるのは不快だったので、後の世に間違いを正す事を約束に改名に従った。
 私は王樹様を祀る者、社ヤシロの人として名を『杜人モリヒト』と改めた。
 辛気臭い戦後処理も終わり、失われた時間を補うように急速に復興が続く。
 鉄器文化は木材加工技術を飛躍的に上げた。より大型の舟の作成も可能となり、漁業は再び発展の時を迎えている。 少々コストが高いが、鉄製の農具も作製して農業の効率化も図れるだろう。
 幸いにも山犬のおかげでモリトの血筋は残り、高度な技術を持つ者として国の再興を大いに担ってくれていた。私の民はきっとこれからも大丈夫だ。
 今日も私はいつものように山犬の背に乗り、ぐるりと国を観察し、杜人神社へと帰った。
 あまりに遅くなると監視役の雉鳴女が良い顔をしないのである。彼女はいつもピリピリした攻撃的な気配を隠そうとはしない。私は言ってみれば敵国の王に当たるのだからしょうがない話ではあるのだが……。
 山を登り、木々を掻き分け御社が見えてくると幾つもの気配がある事に気が付く。

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 漁民達が網を抱え境内で祈りを捧げていた。それを前に雉鳴女が困ったような表情でこちらを見ている。私が何事かと尋ねると、漁が上手く行くようにお願いに来たのだと言う。舟で沖に出るのは死の危険が付きまとう。大漁祈願よりは安全祈願のようだった。
 ……そのために、わざわざ山奥の緑深い神社まで来てくれた。
 胸にありがたい気持ちが込み上げて来て一も二もなくすぐさま私は応えた。
 漁港に御社を築いてもらえれば、波の荒れる日はすぐに鎮めてあげる。
 私の言葉を聞くや否や、彼等はすぐさま飛び出し山を降りていった。
きっと2、3日の内に簡単な御社が拵えられるのだろう。分社を作るのは確かに考えていなかった。交番や派出所のように要所へ置いておくと便利だろうか……。
 思索に耽る私に雉鳴女が疑問の声を上げる。いつになく鋭い視線はただの詰問でないと告げていた。私も、真剣に答える。
「貴方は山の神ではなかったのか」
 私は、山の神であったとは思っていません。
「貴方は海の神であるのか」
 時と場合によればそうする事も出てくるでしょう。
「山犬に乗る神が海も治めると?」
 民を守るため、治めては駄目なのですか?
 私は相手の言い分にちょっと悩んでしまった。神様は意外と『何とかの神』のように専業が多い。複数を兼ねる神も多いのだが、この聞かれ方はおそらく、『中央が海を治める神霊を遣わすからお前は大人しく山だけ治めていろ』の意味で言っているに違いない。
 思わぬ所で叛意と取られかねない発言をしてしまったか!。そう内心で慌てる私だったが、雉鳴女は優しく微笑んだ。
「私はどうにも貴方の事を見誤っていたようです」
「倭では荒ぶる野蛮な神であると伝えられておりました」
「真実は杜人の神は慈悲満つる賢神であったと」
 鳴女の字に賭けて、誤りを正す事を誓いましょう。
 ……と、本来、私のお目付け役で上役でもある彼女が私に頭を下げた。私は間抜けにも驚きのあまり立ち尽くしていただけだった。

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 それから、月が一回り満ち欠けを繰り返した後、雉鳴女は中央へと帰っていった。あの質問の日から彼女は監視役にも関わらず私の仕事を良く補佐してくれた。鳴女とは伝令を主に行う神霊の一族で、多種多様な経験から凡そ何でもできるらしい。また手伝いに来てくれないかな、と私は凪いだ海に呟いた。
「はやり、これは『鄙の国』の匂いだ・・・!」
 そう改めて感じ直した雨田虎彦は、大分の旅をまた思い起こした。
 かなり以前の話(1978年・昭和53年)だが、 奈良で感触を抱き、そうして重箱の一段ほどに分厚い一冊を旅行カバンに押し込んで、虎彦は大分県に行くことにしたのだ。その一冊とは、青表紙の上製本、北原白秋について書かれた重要な書籍であった。じつはその半年前の4月5日に、大阪府藤井寺市の三ツ塚古墳から古墳時代の修羅が出土した。虎彦は前年からその発掘に携わっていた。
 修羅(しゅら)とは、仏教の八部衆の一人、阿修羅であり、また仏教の六道の1つ、修羅道ともみられるのだが、それが古墳から出土するものではない。古墳発掘の場で、修羅と書けば(ソリ)と読み、巨石運搬用のソリである。これは重機の存在しなかった時代に重いものを運ぶ重要な労働力を軽減させる手段であった。コロなどの上に乗せることで、摩擦抵抗を減らすことができる。
 この発掘は全国的に大きな反響を呼び、同年9月3日には、朝日新聞社や考古学などの専門家によって、市内の大和川河川敷で、復元した修羅に巨石を乗せて牽引する実証実験が行われた。
 実証実験の見学を終えた後、虎彦はしばらく飛火野を歩きながらホテルへと向かった。



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                              第37話に続く
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   京都 二十四節気 清明。


  
   京都 二十四節気 穀雨。




   そうごリンク
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   クリック・ボタン gifA 5 gif   ひめくり古都の道
   京都 花そとば



  つきの暦  2013年2月

  つきの暦 2013 2



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